石屋になってから、毎朝「お参り」に行くようになりました。「お参り」を始めた頃は、手を合わせて何をすればいいのか…が分からなかったので、とりあえず形として手を合わせていました。そんな時、リスペクトする先輩から「『お墓』は幸せの交換の場所」という話を教えていただきました。そして、「『ご先祖さま』に感謝して幸せを願えば、必ず返してくれる。だから、手を合わせた時は『ご先祖さま』に感謝を伝えるだけで十分。」ってことを教えていただきました。
それまでは「お参り」に行きながら若干戸惑っていたけれど「それならできる!」と思って、その日から「お参り」の時間を「ご先祖さま」に感謝する時間としました。そして、心の中で「いつも見守ってくださって、ありがとうございます。」って伝えることだけに集中しました。
すると、不思議なのですが、ザワザワしていた心が少し落ち着いていくのを感じました。そして、おじいちゃんやおばあちゃん、お世話になったみなさんが心に浮かぶようになって、感謝するだけでなくて、ちょっとずつ対話をしている自分に気がつきました。そして、心の中で家族のことや仕事のことなどについても、少しずつ言葉になっていくことにも気づきました。毎日、感謝をして、対話をして、自分の中で言葉になっていくこととまた向き合うので、家族や仕事に対する気持ちも少しずつ変化していきました。
手を合わせることは「お墓さん」におられる方に…と思っていましたが、それだけじゃなくて、「ご先祖様」のことをイメージしながら、いろんなことを見つめる時間、振り返る時間になっています。そこに「ご先祖さま」がそっとそばにいてくださって、見守ってくださってる…って感じ。不思議ですが、おもしろいです。
息子が「お参り」をする姿から気づいたこと。
自分自身にとってもものすごく大切な時間になっているのですが、ここ数年は朝の「お参り」に息子がついてくるようになりました。真摯に「お参り」をする息子の姿から、日々気付かされることがあります。
となりで真摯に手を合わせる息子を見ていていつも思うことは、彼が心の中でどんなことを思っているかは全く分からない…ってこと。でも、彼は本当に真摯に手を合わせていて、「ご先祖さま」と対話をしていることは間違いありません。だけど、それは隣で見ているボクには全く分からないんです。
息子を見ていて思ったのですが、よく考えたら、ボク自身が「お参り」しているのを見ている周りの方がいたとしても、ボクが何を心の中で思って祈っているのか…ってことは誰も分かりません。「お参り」を始めた頃、何をどうしていいか分からなかった時と、その頃とはだいぶと心境が変わってきてたくさんの対話をしている今と、もしも周りで見ている方がいたとすれば同じように見えるかもだけど、確かにボク自身の心の中は全く違います。おもしろいです。
こんなことを感じるようになって、ある時、息子に「『お参り』をしている時って、何か心の中で話をしているの?」って質問してみたことがありました。すると、息子は「お墓さんでは『ご先祖さま』に、神社では『神様』に『ありがとうございます』ってお礼を伝えて、お願いしたいことをお願いしている。」って教えてくれました。おもしろいです。
「手を合わせる」ことで広がる世界。
こうやっていろんなことを考えていると、「手を合わせる」ってことは、息子もボクもそうだけど、誰にも邪魔されないし、誰にも分からない【その人の中だけの世界】が広がるんだな…ってことです。
息子は、お墓さんで「ご先祖さま」のことを思うと「ご先祖さま」と対話をしているし、神社で「神様」を思うと「神様」と対話をしています。この話を聞いていて気がついたのは、「お参り」する場所が違うだけで、彼の心の中では彼が思った相手と対話をしている…ってこと。
そう考えると、確かにボクも、おじいちゃんを思うとおじいちゃんと対話ができるし、おばあちゃんを思うとおばあちゃんと対話ができます。師匠を思うと師匠と。神様のことを思うと神様と…。自分自身が誰を思うか、何を思うかってことで、その先に無限の世界が広がっていく…という不思議。おもしろいです。
そして、それは、ボク自身がそうだったように、いきなり広がっていくものではなくて、日々繰り返し手を合わせて、何度も何度も練習をすることで、その世界を広げていくことができるのかもしれないな…と思っています。ボクもこれから日々「お参り」をして向き合っていくつもりです。がんばります。
最近、これまではほとんどついてこなかった次男が「お参り」についてくるようになりました。次男も、初めはよく分からないかも…と思いますが、毎日「お参り」を繰り返す中で、いろいろ感じてくれると嬉しいです。息子たちと「お参り」を続けることで、彼らがこれから大きくなっていく時に、少しでも彼らを支える世界を心の中に広げてくれたらな…と思っています。
庵治石細目「松原等石材店」3代目 森重裕二
