久々に前の仕事の同僚に誘ってもらって飲みに行きました。こうして、今でもつながって話ができることは本当にありがたいし、大切にしたい時間です。
久々に楽しい時間が過ぎていく中、気がついたらボクは最近たくさんの方に伝えている「お参り」が子どもたちにとってどれほど教育的効果のあるものなのか…ってことや、庵治産地でたくさんの職人さんの手で作っている「お墓さん」のことなどを熱く語っていました。

すると、ふいにそれまではずっと話を聞いてくれていた元同僚で後輩の大西くん(仮名)が「『お墓』とか『お参り』とかって大事ですよね。」と静かに話し始めました。
実は、ボク難病になってしまったことが分かって…。病院でそれを宣告されて、初めに向かったのがお墓だったんです。おじいちゃんにそのことを伝えにいきました。「お参り」をして、そのことを報告したら、なんだか「そのままで大丈夫。」って言ってもらった気がして、ホッとしたんですよ。お墓って絶対大事な場所ですよね。
病気の話も知らなかったこともあって、全く想像をしてなかった話に、ボクはびっくりしました。でも、本当にすごい話…って思って、思わず「おじいちゃん、なんかいつでもそばにいてくれてたんやな。」って言葉を返していました。すると、さらに話し始めてくれました。
実は、ボク小さい頃におじいちゃんに、今のお墓が建つ前の墓地によく連れて行ってもらって、一緒に草抜きしてたんですよ。おじいちゃんが「ここにお墓が建つからな。」っていつも言ってくれてて…
今、ボクが自分の息子たちに同じような想いを持っているように、ボクはおじいちゃんはいろんな思いで大西くんを墓地に連れて行っていたんだろうな…と思います。おそらく幼かった大西くんは、そんなこと感じていなかったと思うけど、本当に困った時に、お墓さんに行って、おじいちゃんと話をした…ってことだと思います。なんかそういう気持ちって、ちゃんと伝わってるんだな…と思って、ちょっと涙をこらえきれませんでした。

ボクは最近の「お参り」についての学びから、すぐに「おじいちゃん、大西くんになんかあったらいつでもここにおいで。絶対助けてあげるから…って言ってくれてたんやな。実際に病気が分かった時にちゃんとお墓に行っておじいちゃんに助けてもらえたんやな。」と伝えました。
大西くんは、さらに話し始めました。
今、この話をしていて分かったんですけど、ボク、実は毎日乗ってる自転車にもおじいちゃんを感じるんですよね。小さい頃、自転車の乗り方を教えてもらったり、一緒に自転車でいろんなところに行ったり…。パンクを直してもらったのもよく覚えています。だから、自転車に乗る時っていつもおじいちゃんと一緒なんです。
実は、大西くんは、すごく遠い職場にも関わらず、毎日自転車で通っています。その話を聞いて、ボクはちょっと「なんで?」って思っていたのですが、やっと腑に落ちました。彼が遠くまで自転車で通うのは、おじいちゃんの存在を感じることができて、いつもなんだか励ましてもらえる感じがしていたんだな…と納得しました。そんなことを伝えていると、遮るように大西くんが話し始めました。
森重さんだけが腑に落ちたんじゃないですよ。ボクも今、腑に落ちました。ボクはなんでこんなに自転車に乗りたくなるんだろう?って思っていたけど、今日、ずっとこの話をしてて、やっと分かりました。自分自身、なんでこんなにこだわっているのかな…と思っていたんですけど、「自転車」に乗ることは「おじいちゃん」との時間なんだ…って分かりました。かなりスッとしましたよ。ありがとうございます。
なんと彼は、そのことをこれまでは意識していなかったんだそうです。でも、こういった話をしていた中で、「自転車」へのこだわりの中に大好きだった「おじいちゃん」がいた…ということを意識できた…ってこと。なんだか泣けてきます。
ボクは、大西くんと遅くまで飲みながら、大西くんはまたこれから「自転車」に乗る時間を大切にしていくんだろうな…と思っていました。そして、これから大西くんが「自転車」に乗っている光景を想像すると、ちょっと微笑ましく、なんだか温かい気持ちになります。これまでは不思議なこだわりだった「自転車」に乗る時間が、大好きだった「おじいちゃん」を思える時間になるってこと、本当に素敵なことだな…と思います。「おじいちゃん」もうれしいだろうな…と。
大西くんと久々に飲んで、自分を大切に思っていてくれた人とのつながりが今の自分を支えているんだろうな…ってことに気づかされました。そして、ボクのこだわりや何気ない行動とか選択の中に、大切な人の存在が隠れていることがあるんだろうな…って思いました。
普段はあまり話さないけれど、ボクはこれからさらに「お参り」のことと、「お墓さん」のこと、「おじいちゃん、おばあちゃん」など大切な人のことを、いろんな方とたくさん話していきたいと思っています。そして、そんな話を子どもたちにも聞かせてやりたいな…と思いました。
その日は2人でだいぶ遅くまで飲んでしまいました。いい時間でした。大西くん、ありがとう。
庵治石細目「松原等石材店」3代目 森重裕二