前回の記事「『ご先祖様には子孫を幸せにする力がある。』という言葉の裏に隠れていた『子どもを思う熱量』のこと。」では、柳田國男の「先祖の話」の中にある「ご先祖になる。」という言葉から、考えたことをまとめてみました。
今まで「ご先祖」といえば、これまでに亡くなった方やずっと昔のみなさんのことをイメージしていました。前回の記事を書くまでは、「ご先祖」とは、つまり”過去”のみなさんのことでした。でも、自分が「ご先祖になる。」って考えられたことで、自分自身の”未来”のことと「ご先祖」という言葉がつながって、大きく視点が変わりました。
この年末年始に、この視点を得られたことは、自分にとってかなり大きな出来事でした。この記事を公開してすぐに、香川県高松市でグリーフケアに取り組んでおられる慈照寺の坊守・秋山さんからメッセージをいただきました。
お参りの投稿を見ていて、まさに私たちがグッド・アンセスターになれるかどうか、だなと感じながら読ませていただきました。私も日々、よき祖先になれるかどうか、子どもやまだ見ぬ孫や、その先の人たちの姿を大切にしながら生きられているか問い続けています。
ご存じかもしれないですが、松本 紹圭さん(僧侶)が翻訳されている本「グッド・アンセスター」がおすすめですよ。
お墓さんって、私たちがご先祖様とつながる媒体であるとともに、自分がどんな先祖になるのか、今を生かされている私たちの姿を気付かせてくれる大切な場所でもあるなぁと感じています。
これまで「グッド・アンセスター」って言葉を全く聞いたことがなかったので、オススメいただいた本をすぐに注文しました。
「グッド・アンセスター」って?
届いた本、とても興味深い内容で一気に読み切ってしまいました…。内容を端的に説明すると「自分が『よき祖先』になれるか?ってことを問うこと。」について書かれています。自分たちが「よき祖先」になれるか…という視点を持つことで、短期思考から長期思考に変わっていく…ということでした。ものすごく面白かったです。
帯にも書いてあるとおり、台湾のデジタル担当大臣のオードリー・タンさんも、「これからの人類にとって、最も重要な問いは?」と聞かれて、「どうしたら、よき祖先になれるか、ということです。」と答えておられるそうです。
何より、前回の記事で書いた「ご先祖になる」の言葉から考えたことと、驚くほど共通した内容で、この本と出会えたご縁に感動しているところです。かなり頭の中が整理させる感じでした。
「ご先祖になる。」と「良き祖先になる。」の言葉
柳田國男さんが「御先祖になる」という言葉を「先祖の話」に書いたのは昭和21年なので1946年。そして、ローマン・クルツナリックさんが「グッド・アンセスター」で「良き祖先になれるか」ってことを書いたのが2021年。約50年の時を経て、同じような話が書かれていることに驚きます。
だけど、自分自身がどちらの話を読んでも、学びになることばかりで、おそらく大切なことは時代が変わっていっても、不変のものがあるんだな…ってことを感じさせてもらっています。おそらく、ボクが今、毎朝続けている「お参り」のことについても、時代が変わっても不変のもの…だと思うので、日々、いろいろ考えながら、いろいろ感じながら続けていくつもりです。
そして、その自分自身がいずれは、次の時代やそのまた次の世代のご先祖さまになる…、祖先になる…という視点は、確かに素晴らしいものだと思っています。この視点を大切にして、今の生活を見直したり、これからの世代のことを考え、祖先として恥ずかしくない自分のあり方をしっかりと考えながら、日々の修行をがんばっていきたいと思います。今日もボチボチがんばります。
庵治石細目「松原等石材店」3代目 森重裕二